ラジオ小説 第2話 HIROSHI

2011.05.06.23:25

5月6日(金)

 放送日 毎月第1金曜日     19:00~19:30
(再放送)毎月第2土曜日     11:00~11:30 



原作       MOTO-TOMO
構成       桜塚 れい

◆ メインキャスト ◆

ケンジ      MOTO-TOMO
ハルミ      桜塚 れい
HIROSHI    西野 武流
ナレーション   奈良 純 ・ 桜塚 れい


 第2話  

・・・・・ HIROSHI・・・・・・

青く澄んだ空。
2台のバイクが仲良並ぶ。
ケンジとハルミはmixiで知り合ったツーリングの仲間であり、
いつものパーキングエリアで待ち合わせ、
いつものようにツーリングへと出発する。

「じゃ、行くよ?」
「OK!」

ヘルメットをかぶっているから声は聞こえない。
けれど、ちょっとしたジェスチャーがお互いの気持ちを伝える。

今回のツーリングルートは、峠にあるイタリアンカフェのお店。
ここのパスタがハルミの大のお気に入り。
今回は彼女が「パスタが食べたい!」と
いう熱望でルートが決まったようなものだ。

ハイウェイに入ると、景気の良いエンジン音を響かせて
2台のマシンはハイウェイを泳ぐ。
ハルミは水を得た魚のようにケンジの先を走る。

ケンジは慌ててハルミを追う。

突然、ハルミが急ブレーキを掛けた
インターチェンジから車が急に入って来たからだ
「ハルミ、危ないぞ!」とケンジが叫んだ。
ケンジがハルミを追い抜き 途中のサービスエリアーに
入るよと指で合図した。
ハルミは「OK!」とパッシングライトを点滅させた。

2台のマシンは、左にシグナルを点滅させてエリアーに
吸い込まれていった。

サービスエリアーのある場所は、小さな展望台のようになっており、
ヘルメットを脱いだハルミは大きく伸びをしながら
「はぁ~!気持ちいい!」と歓声をあげた。

ケンジはゆっくりとハルミに近づき
「ハルミ。ちょっとペースが速くないか?
先っきは危なかったぞ!」

「うん、ちよっとびっくりしちやった。気を付けるね。」

茶化す様に舌をペロリと出したハルミに
ケンジは少し険しい表情でうなずいた。

---3年前

ハルミと出会う前のツーリングと言えば、
幼馴染のヒロシと行くのが「いつも」だった。
当時ケンジとヒロシの中ではレプリカブーム。
二人は有名なライダーの走りをまねてよく走っていた。

「お、ヒロシやるじゃん!」
「出ました!ハングオン!」

走っているうちに、お互いのテンションは急上昇し、
すっかりサーキット気分になって走ったこともあった。

そんなある日のハイウェイ。
走行車線から追い越し車線に飛び込んだヒロシ。
次の瞬間。
ヒロシとマシンが宙を舞った。

ガッシャーン!

「ヒロシー!!」

一瞬の出来事だった。
何が起こったのか、理解できなかった。
次にケンジがヒロシに逢った時は…
マシンとともに永久の眠りについていた。

もしもあの時・・・なんて後悔が心を虫食んだ。
ケンジはその一件から、二度とバイクに乗らないと誓った。

しかし、その約一年後。
抜け殻のように暮らしていたケンジは 公園のベンチに腰掛け、
自転車で遊んでいる子ども達をただ見つめていた。
幼いころの自分とヒロシに姿を重ね、懐かしさを覚えた。

「ブゥン!ブゥーン!」
遊んでいる姿はバイクを夢見て、お互いにレーサーライダーとなって
サーキットを走り回っている昔の自分とヒロシが重なり合う。

幼き頃のヒロシを思い出しているといつの間にか、
ホコリが積ったマシンの前に立ち尽くしていた。
マシンのバッテリはすでに死んでしまっているはずだが、
そっとシートを外しセルを押すとエンジンが動いた。
そして、エンジン音と同時に聞こえてきた声は・・・
聞き間違えることのできない・・・ヒロシの声だった。
「ケンジ」
「ヒロシ?」「ヒロシ!」

周りを見回せど、姿は見えない。名前を呼べど返事はない。
けれども、確かに聞こえた。ヒロシの・・・声。

「ケンジ。走れ!俺の分まで走れ!」

肩にあるはずのないぬくもりが産まれた。

「・・・ヒロシッ・・・!」

アクセルに置いた手の甲に涙が一粒、また一粒と落ちる。
ケンジは唇を噛みしめ、そっとうなづいた。

「ケンジ?ケンジってば!」

ハルミに肩を揺らされ、声でハッとする。

「どうかしたの?なんだか険しい顔をしていたけど?」

「あ・・・いや、なんでもないよ」

それでも心配そうに覗き込もうとするハルミをよそに、
ケンジは展望台から乗り出すように大自然を望んだ。
右手に握りこむのはヒロシが愛用していたキーホルダー。

「なぁ、ハルミ?」

「ん?」

「そろそろ行くか!」

「そうね!もちろん『安全運転』で!」

チャリ・・・とハルミはケンジからKeyを取り上げて
「HIROSHI」
と名前の彫られたキーホルダーをブラリとたらす。
目に入るキーホルダーの向こうにやさしく微笑むハルミの姿があった。

「だな!」

ハルミの手からKeyを取り返し、エンジンに火を入れる。

「準備できたよ!」

グッドサインを出すハルミ。
目的地であるイタリアンカフェに向かって再び走り出した。


   「HIROSHI」

  作  MOTO-TOMO

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