ラジオドラマ 「出会い・別れ・そしてバイク」 第6話

2013.09.06.19:00

「出会い・別れ・そしてバイク」
原作 MOTO-TOMO

第6話 「悪夢・前編」

タカシ         MOTO☆TOMO
女性ライダー      えりなちゅらる
ナレーション      ゆき


タカシ     あっ、雨がとうとう降ってきやがった。
        今日は、ついていない1日だ。

先週の日曜日から、マシンに乗って走りたく 身体がウズウズしていた。
そして今日の朝は、いつもより早く起き ヘルメットとグローブを持って 階段を勢いよく降りて マシンにキーを差し込んでセルボタンを押したが、マシンは何も答えてくれなかった。
仕方なくバッテリーを外して 三時間程充電し やっとマシンが復活したのは、午前九時を過ぎた頃だった。

表通りに出て国道をしばらく走る。
日曜日のこの時間になると サンデーマイカー族が顔を現す。  こいつらが厄介な奴らである。    急に止まったり、合図なしで曲がる。   まるで地雷爆弾を避けながら走るようなものだ。
いくつかの地雷爆弾を避けながら走っていると、高速道路の標識が見えてきた。

マシンを倒しながら滑り込ませて加速線でシフトダウンして一気に本線に合流して行く。
シールドには黒いアスファルトとイエローラインが飛び込んでくる。
右側のミラーには、赤い車が遠ざかって行く。
目の前に飛び込んでくるコーナーを抜けるたび身体中のアドレナリンが潤滑するのがわかる。

タカシ      気持ちがいいぜ!

山間のワインディングロードを抜け直線になる、そこから次のインターチェンジまでアクセル全開。インターチェンジの出口の標識が見えてきた シグナルを左に出し一般道に入る。

進行方向左側の川に沿ってマシンを流す。
前方に長いトンネルが見えてきた、冬場は道が凍って走れないルートである。
トンネルを抜けると峠方面を差す標識が有りそこからは、10分あまりで頂上の駐車場に着く。
駐車場には、いつもの常連のマシンが並んでいる。

タカシ      相変わらずお前ら好きだね

と言ってしまう。
この峠に何が有るのと聞かれたら 答えは何も無い。
あるのは、木製のベンチと自動販売機と手洗所だけ。
ここにマシンを止めてベンチに座り 自動販売機で買った冷たい缶コーヒーを飲み 2・3本のタバコに火をつけて、そしてまた来た道を帰るだけなのだ。

それでも此処に来たがるのは何(なんで)だろう。
ここの風景が日常の生活から開放してくれるからだろうか?
それとも身体にパワーを補充してくれるのかもしれない。

遠くから聞き覚えのない排気音が近づいて来る。

タカシ       うん?常連の誰かが新しいバイクを買ったのか?
          それとも新顔がお出ましか。

と思いつつ 皆の視線は駐車場の入口に向いているのがわかる。
黒いカラーのマシンがオレンジの光を点滅させながら入って来た。
峠の常連は、左側の眉をあげ 口元を少しゆがませながらマシンを見ている。
現れたのは、最新型1300ccのBIGマシンである。

そのマシンは、俺のマシンの近くに止めてスタンドを出して黒いヘルメットを取った。
すると、長い髪の女性のシルエットが目に映った。
女性ライダーは右手で髪をうえにかきわけながらミラーの上にメットを被せて、ゆっくりと歩きながら自販機に行きボタンを押し しゃがみながら缶コーヒーを取り ジャケットのポケットからハンカチを取り出して缶コーヒーを包んで首元にあてていた。

一瞬、彼女と目が合ったが俺は目を逸(そ)らしてタバコを口に銜えた。

女性ライダー     こんにちは

と話し掛けてきたのは彼女から、そして俺も挨拶代わりに

タカシ        こんにちは

と言い 次に

タカシ        ずいぶんと大きな排気量のマシンを乗っているんだね。
           それに新型じゃん。

と少し嫌(いや)みぽく話した。

女性ライダー     実は見た目で買ってしまいました。 まだ、マシンに慣れなくて上手く走れないんですよ

と照れくさそうに言いながら缶コーヒーを飲んでいた。

女性ライダー     ここには、よく来られるんですか?

タカシ        うん、まぁ・・・・。   時々ね。

女性ライダー     私、今日 初めて来たんですよ。  良いところですね。
           これからどちらまで行くんですか?

タカシ        うん、まぁ。 夕方から用事があるので、後は来た道を帰るだけさ

と下手な言い訳をした自分が少し恥ずかしかった。
どちらから来たのと俺が聞くと隣の県から来たそうで 
今日は、マシンの慣らし中で朝早くから家を出て来たそうだ。 
そして、学生?仕事してるの?と聞くと
車のディーラーに勤めているらしい所までは聞くことができたがそれ以上聞くと
オヤジぽくなるのでやめた。

女性ライダー     あのバイク、あなたのですか?

タカシ        そうだけど・・・・。

女性ライダー     今どきあんなアメリカンバイク見ないから・・・。

タカシ        それって、あのおんぼろバイクにまだ乗っているのと聞こえるんだけど。

女性ライダー     あぁ、ご免なさい。   そんなつもりで・・・。

タカシ        いいよ、わかっているよ。 
           でも、昔の国産のバイクはあれがアメリカンだったんだよ。
           ネイキッドのマシンに、アップハンドルと段付きシート・リヤータイヤが
           少し太くしたマシンがアメリカンと呼んだのさ。
           今のマシンは、外国産のアメリカンのコピーみたいに造られているけどさ。

女性ライダー     よく見ると個性的ですね。

タカシ        うん?!有り難う。   族車じゃないよ。  

女性ライダー     あぁ、ご免なさい。

ハ・ハハハハァー(笑)

タカシ        そしたらそろそろ帰るわ。

女性ライダー     あぁ、私も。   そしたら峠をくだった所でバイバイですね。

タカシ        そうだね、お先にどうぞ。

そして二台のマシンは、峠のスロープを滑りだした。
前方のS字のカーブに彼女が入って行く。
それを見た次の瞬間 俺は唖然となり目が止まった。

コーナーに入る進入速度・ブレーキング・コーナーリングフォーム そして素早い立て直し
流石がBIGマシンを乗るだけの技量である。

俺の750(ナナハン)にプラス550ccの排気量をいとも簡単に操る彼女は、何者か知りたくなってきた・・・。
今度、いつか遇える機会が有るのを楽しみにしておこう。

彼女が右腕を揚げて手を振った。
俺は、軽く手をあげた。
そしてシグナルを彼女とは反対方向に出し別れた・・・・・・。

その時 タカシは、あの悪夢がゆっくりと近づいているとは気付かなかった・・・・。

                           ・・・・つづく。

「悪夢・前編」
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